ビタミンC(アスコルビン酸)には酸化型と還元型がある。
新鮮な野菜にはほとんど還元型のみ含まれるが,貯蔵中に還元型が減少する過程で酸化型の割合が増えることがある。
・・・というわけで,野菜の中の酸化型ビタミンCを測定する手法を試行錯誤していた。
還元型ビタミンCは,現在実施している方法(HPLCという機械を使う)で測定可能だが,酸化型は不可能。
そこで,「酸化型を還元型に変化させる処理をして,酸化型+還元型の総量を求め,もともとの還元型の量を差し引く」という方法を試してみることに。
しかし,新鮮な野菜には酸化型はほとんどないし,処理がうまくいったのかどうかが判断できない。
そこで,「市販の還元型ビタミンCで水溶液を作って濃度を測定しておき,これを酸化させて(還元型が減った状態にして)から分析し,次に還元処理を行って最初の濃度に戻ることを確認する」という,ちょっとややこしい実験をすることにした。
重要なのは還元型Cを酸化させ,酸化型Cの状態で留めること。
ビタミンC水溶液を室温で長時間放置してみたり,80℃くらいで加熱してみたりしたが,酸化型では留まらず,分解して減ってしまった模様。
酸化型Cは壊れやすいので,やっぱり,という感じだが・・・
こうなると,やはり酸化酵素のパワーを借りるしかない。
そこで迷わず候補に挙がったのがキュウリくんであった!
キュウリくんはかの日もビタミンC酸化酵素の抽出実験でお世話になった。
実は,自分はキュウリは苦手で,食べる目的で買ったり収穫したりしないのだが,実験目的には大変重宝しているのだ・・・(^_^;)
キュウリのビタミンC酸化酵素は,実の真ん中当たりが強いとのこと。
中央付近からおろし汁を調製。(・・・といっても実際にやったのは共同実験者だが。)
4 mg/mLの還元型ビタミンC溶液(ミカンの10倍くらいの濃い液)を等量のキュウリ汁と混合し,30℃で10分間反応させたところ,還元型Cの濃度は見事に減少し,当初の17%になった(83%減少)。
これを試薬(知る人ぞ知るDTT)で還元処理したところ,きれいにもとの還元型Cの濃度が再現できた。
・・・と,いうような,特に何と言うことはない予備実験の一コマの風景なのだがが,キュウリくんのビタミンC酸化酵素の強さを改めて実感し,感動したひとときであった。
野菜の科学はやっぱり面白い。
誤解のないように付け加えておくと,酸化型ビタミンCも人にとっての栄養価は還元型と同等なので,キュウリと調理して酸化が起こったとしても問題はない(すぐに食べるなら,であるが。)