マルメロ在来種!

六斗農園の園主様にお願いしていた,マルメロ在来種を入手した。

在来種は通常果実は小玉であるが,今年は大きめだそうだ。

さわやかな香りが強く,品質はよさそう。

 

まだマルメラーダを作ってみてないが,そのうちのお楽しみなのだ!!

(マルメラーダについては「ベジフル写真館」の中の「ポルトガルの市場」の最後を参照)

在来種(左)とスミルナ(右)を並べてみた。

本来のスミルナはもっと大きい。

分析してみたら,糖度(約14°Brix),アスコルビン酸(18〜20 mg/100 g)と両品種に差がなかったが,滴定酸含量は,在来種が約1.0%,スミルナが0.6%と,在来種の方が高かった。 

 

在来種は江戸時代に諏訪に持ち込まれた品種で,歴史を感じる果樹である。

諏訪の人たち(信州の人たち?)は,マルメロのことを「かりん」と呼んでいる。これは江戸時代から定着してしまった誤称であることが明らかとなっているが,諏訪では「かりん」で町おこしをしており,「かりん並木」,「かりんちゃんバス」,「かりん祭り」,「かりんエキス」,「かりんシラップ漬け」など,様々な場面で「かりん」の仮面を被ったマルメロに出会う。

 

しかし実際は,マルメロ(Cydonia oblonga)はマルメロ属,カリン(Pseudocydonia sinensis)はカリン属と,異なる別の植物である。

 

もっとも,諏訪湖畔には,マルメロだけでなく,本当のカリンもそれなりに植えられている。しかもごっちゃにして植えているからさらにややこしい。さらに,諏訪の人たちは在来種のことを「本かりん」(または,和かりん)と称しているので,ますます「本当の」カリンと区別がつきにくいのだ。(ちなみに,スミルナは「洋かりん」。)

 

カリンは確かに知名度は高いが,マルメロだって知れば知るほど,その背景や歴史・文化としておもしろい話がたくさんある。そろそろ「かりん」の仮面を脱いで,「マルメロ」で堂々と勝負するのもよいのじゃないかな(^_^;)

 

ところで,平成21年度の「特産果樹生産出荷実績調査」によれば,マルメロの収穫・出荷量第1位は長野県であり,全国の約70%を占めている。信州は全国的にみてもマルメロの最も重要な産地なのである。

 

このようなユニークな特産果樹が,後継者不足で栽培面積も減りつつあることは悲しいことである。中でも在来種は収量が低いことから生産者が少なくなっているため,貴重な果樹なのだ。

 

マルメロは体に有用なポリフェノールやペクチン質が多い。長時間加熱してペースト状に加工すれば赤いマルメラーダになり,煮汁を砂糖と煮詰めれば,ノストラダムスが得意げにレシピに記述した「王に献上できる極上のマルメロゼリー」を作ることもできる。また,熱水抽出物は動物実験で抗アレルギー作用がみとめられている。マルメロが持つこのようなユニークな特徴やおもしろさ,機能性や利用性を広く知ってもらい,失われ行く食文化に歯止めをかけたいと強く思う。